侍先生!
「最後にちょっと練習しておくか」


「はい!」


その後、私と先生は最後の通し稽古をしていた。


「思い上がるでないわ!」


「信長様…」


「お前一人の手柄のような顔をしおって!」


私と先生の練習を見て、皐月がボソリと呟いた。


「これって、いつもの信長ごっこじゃない?」


…確かに、そうだね。


時計の針は、11時を示した。幕が上がり、客席からパチパチと音がした。
はじめは、フロイス役の和也くんが喋ったあと、先生の登場。


なんか、『キャーッ』って聞こえたような…。
き、きのせいだ、きっと!


「噂通りのうつけ者のようですね」


はじめは通三役のクラスメイトと一緒に演技をする。


…なんかウズウズしてきた。


よくかんがえたら、こんな本格的な信長ごっこってはじめてじゃない!?
緊張もとけて、劇が始まって10分も経たないうちに楽しさで体が震えていた。


そして、はやいもので後半まできてしまった。
ここよ、ここ!一番盛り上がる場面は!!


「殿の天下もあと一歩ですな! 我々も骨を折った甲斐がありました!」


「光秀…」


と、先生が呟くと、私の頬をめがけて拳がとんできた。


――バキッ!


…あれ?
効果音は鳴ったんだけど、それ以外にバキッって…てか、頬が痛い!


先生、本当に殴った!
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