侍先生！
「海には…私がここに来たって、言わないでね」


真帆さんは少し悲しそうな顔をして言った。


…やっぱり、侍先生に会いに来たんだ。
でも、振ったのは、真帆さんだよね？


どうして…。


「姫条さんは、私と海が別れたの…知ってるんだね」


私は頷いた。


真帆さんは“そっか”と言うと、視線を遠くにいる侍先生の方へうつした。


「海のお父さんは、ココの教師だったんだ」


真帆さんは、目線をそのままに、私に話す。


「すっごく、素敵な先生だったみたいで、先生の教え子さんは卒業しても、家に遊びにきたり、手紙を送ってくれたりしてたんだって。　海は、そんなお父さんを見て、自分も教師になりたいって、物心つく頃から思ってたみたい」


初めて聞く、先生の話。
私は黙って、真帆さんの話を聞いていた。


「やっと、念願だった教師になって…今年、やっとこの、お父さんが務めてた学校に赴任する事が出来たの。　…でも、私は、喜んであげる事が出来なかった」


真帆さんは、視線を落とした。
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