侍先生!
「どうして…」


「夢が叶った海は、嬉しかったのか、仕事に没頭してた。 デートする時も仕事を持ち込んで、話すのは学校の事だけ。 私の事なんか、まったくおかまいなしで。 それで何度も喧嘩したなぁ」


その時、真帆さんの瞳から、涙がスーッと流れた。


「…彼氏が、夢を叶えて、頑張ってるのに、仕事よりも、私の事を見てほしいと思う私は、彼女失格だと思ったの。 この前、海の先生姿を見て、そう思った。」


無理して笑って、真帆さんはそう言った。


「でも、先生はまだ…真帆さんの事…!」


「好きなだけじゃ、駄目な事もあるって、私は思う。 私はただ、海を応援したいだけ」


「そんなの、付き合ってても出来るじゃないですか!」


「付き合ってても、お互い苦しいだけ」


私はそれ以上、言葉が出てこなかった。


出てきたのは、涙だけ。


「あの時も言ったけど…海を、よろしくね」


そう言って、笑った真帆さん。
そのまま、その場を去って行った。
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