侍先生!
「好きなだけじゃ、駄目なの…?」


先生も、真帆さんも、お互い好きなのに。
それでも、どうしようも無い事も、あるの?


…私が子供だから、理解出来ないだけ?


呆然と、そこに立ち尽くしていた。


《大玉転がしに出場する選手は、入場門に集まって下さい。》


そうアナウンスが流れると、私は涙を拭って、入場門に向かった。


「まい、顔色悪いよ? 大丈夫?」


皐月が心配そうに声をかけてくれた。


「大丈夫! さっきうちの組、負けたから、ここで逆転狙わないとね!」


私は笑って、大玉を掴んだ。


ピストルが鳴って、玉をころがしていく。


…これ、結構キツイなぁ。


“彼女失格だと思ったの”


“好きなだけじゃ、駄目な事もあるって、私は思う”


“付き合ってても、お互い苦しいだけ”


真帆さんの言葉が、ずっと頭の中で響いてる。



“海を、よろしくね”


その言葉を思い出した瞬間、体は重力に負けて、私は地面に叩きつけられた。
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