やさしい手のひら・中編【完結】
「調子はどうだい?」

私の手術をしてくれた担当の先生が入って来た

「顔色も良くなったみたいだね。赤ちゃんのこと・・・聞いたかな?」

「はい」

「残念だったけど、君も赤ちゃんも最後まで頑張ったんだよ」

そう言われて、私は涙が溢れてきた

「信じたくなくて君は心を閉ざしてしまったんだね」

自分で涙を拭きながら

「産みたかった・・です」

先生は頷きながら

「今日これから外来で検査をして、明日の午後から退院するかい?」

「えっ・・もう退院していいんですか?」

「帰ってから無理をしないという約束ができるなら帰ってもいいですよ。あまり動くて出血がひどくなるからね」

先生にそう言われて私は由里と凌の顔を見た

「帰れてよかったな」

うん、と私は頷いた

「じゃあ、午後から外来で」

先生と看護士さんは帰って行った

「亜美、よかったね」

「うん」

「俺、明日迎えに来るな」

「大丈夫だよ。一人で帰れるよ」

「何言ってんだよ。無理するなって言われただろ」

「うん・・・ごめんね。迷惑ばかりかけて」

「何言ってんだよ」

凌が私の頭をクシャクシャと撫でた

その仕草が健太と重なっていた


私は看護士さんに連れられて産婦人科に来た

そしてまた診察台に乗った。いつ乗ってもなれないこの診察台も、もう乗ることは当分ないだろう・・・

すべての検査を受け、先生に呼ばれ

「順調に回復はしていますね。ただ・・・」

えっ、何?

「一度流産をすると子供が出来にくい体になってしまうことがあります」

「えっ…私…もう子供産めないんですか?」

「妊娠する可能性が低くくなってしまうのは確かなんです。でも今、不妊症の治療が進んでいます。もしそうなってしまった時は治療をするという方法もあります。そう深く考えないで下さい。100%子供が出来ないということではないんですよ」

「はい・・わかりました」

そのあと先生が話してくれたことを半分聞いていなかった

100%ではないと先生は言った。流産をした人みんなが妊娠しないということではない

でもこのことは私の中に閉まっておこう・・・そう思いながら病室に戻って行った

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