Taste of Love【完】
はじめて翔太の見合いの話を聞いてから数日後、風香はまだその真偽を確かめられずにいた。

そしてそのことが理由で、仕事に身がはいらずにいる。

ひとつひとつの仕事に時間がかかってしまうため、朝から休憩もできないまま今もパソコンの前に座っていた。

時計を確認すれば、午後二時。

(ちょっと、コーヒーでも飲もうかな……)

風香が席を立とうとした、そのとき――

「結城、今から工場だ」

翔太から声がかかる。

 その表情から、いい話ではないことがわかる。

「あの……何かあったんですか?」

「いいから、すぐ準備して。車の中で話す」

「……はい」

 翔太のその様子に、風香は思わず息をのんだ。

 すぐに準備をすると、翔太の後に続いてフロアをあとにした。

「あの……、一体何があったんですか?」

「おととい、お前が工場に送ったメール、アレ数量も材料も違うと指摘があった」

「おととい……確かにメール……あっ」

 思い出して一気に顔が青ざめる。

(たしか、直前に材料の変更があったんだ……)

 それを変更せずに、前のままのデータを工場に連絡していたのだ。

「その顔は思い当たるふしがあるってことだな」

「……申し訳ありません」

「謝る相手は、俺じゃない。工場に着くまでに対応できるようにしておけ」

 翔太は運転をしながら前を見つめたままで、風香にそう告げた。
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