Taste of Love【完】
「すみませんでしたっ!」
 
工場長の前で、翔太と風香はそろって頭をさげていた。

 頭を下げられた工場長は、頭をかきながら戸惑っている。

「ここまでしてもらわなくても、大丈夫なんだけどな……」

「いいえ、もしそちらで気づいてもらえなかったら大変なことになっていました」

 翔太がそう告げ、より深く頭を下げたのを見て風香も同じように頭を下げる。

「……すみませんでした」

(謝ることしかできないなんて、情けない)

翔太に工場に着くまでに対応できるようにと言われていたが、車の中でできることと言えば、会社に電話して雅
実に工場へのオーダーシートの作り直しと、訂正したメールを送信してもらうことしかできなかった。

「さっき、ちゃんと訂正されたのが届いたから大丈夫」

そう言って、ニコニコと笑ってくれているのを見るとますます心が痛む。

「今後このようなことがないように、細心の注意を払いますのでこれからも、よろしくお願いします」

「仕事していると、こういうこともある。次失敗しなければいい話だから」

「ありがとうございます」


 風香と工場長の話を翔太は黙って横で聞いていた。

「それでは、失礼します」

翔太の言葉に合わせて風香も頭を下げる。

「ああ、わざわざ足を運んでもらってすまなかったな」

 工場長の気遣いが風香の身にしみた。

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