Taste of Love【完】
「何言ってるんだよ。俺はイケると思ったからGOサイン出しただけで、ダメなら容赦なく切り捨ててるよ。現にお前の他の企画はへっぽこすぎて笑えるレベルだ」

「そ、そんなひどかったですか……?」

「あぁ、ひどいってもんじゃないな。でもあのボツになったアイディアがあってこの企画が生まれたんだろ?だったらそれも無駄じゃないってことだ」

人好きのする笑顔をみせてビールを一口飲んだ。

(やっぱり部下のことよく見てる。同級生としては悔しいけどやっぱり翔太はすごいな)

「でも本当に今回は色々とありがとうございました。松林君に聞きました。いつも思うんですけど、私ひとりじゃどうにもできないことがたくさんあるなって」

「それは俺も同じ。だからチームで仕事してるんだし。そのための上司だ。うまく使いこなせ」

「上司を?」

「あぁ。上司ぐらいつかえなくてどうするんだよ」

腕でつつかれて身体が揺れた。

「使えるものは、何でもつかえ。それで消費者が喜ぶ商品ができるならそれでいいんだ。誰のための仕事なのか見据える方向を間違っちゃいけない」

「そうですね。いつも追われるように仕事してるから、忘れがちですけど……」

「かっこつけて言ってみたけど、これは俺のお世話になった上司の受け売り」

ニカっと歯をだしておどけた風に言う翔太。

「なんだ、感心して損した。――でも大事な言葉ですよね。忘れないようにします」

翔太にそう告げると満足そうに頷いていた。

他愛もない会話をしながら、目の前にある料理をお互いにつついていた。

「そういえば、さっき俺に感謝してるって言ってたよな」

急に翔太が話題を振ってきた。

「はい、感謝してますよ。室長様」
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