時の彼方に君がいた
僕はせっせと食パンを口に放り込み


コーヒー牛乳を一気飲みすると


また部屋に引っ込んで


『すごく可愛い』らしい水色のワンピースに着替えた。


鏡の前で一回転すると


やわらかなすそがふわりと宙を舞う。


髪がうねっているが、わざとそうしているように見えなくもないのでよしとしよう。


日焼けどめを塗って


うーん、とのびをすると


僕は軽い足取りで再び階段を降りた。


途中でパジャマ姿の兄とすれ違う。


「はよー、今日も自習室で一日過ごすの」


僕の質問に、霖は眠たそうに目をこすって、こくりとうなづいた。


「そっかぁ、大変だね」


「他人事じゃないぞ、翼も二年生なんだから」


「……わかってる」


のんびりしてるように見えて


しっかり苦言は残す。


一歳とはいえ、自分の方が兄だという思いが、霖の中にはあるのだろう。


僕は「いってきます」と小さく言って玄関をでた。


土曜日の早朝散歩は高1からの恒例行事だ。


僕は単調な足取りで歩きながら、


勝手に頬が緩むのを感じた。


朝の日差しは柔らかいが


この時期になると額にうっすら汗が浮かぶ。


それすらも、土曜日の朝には心地良いらしかった。


彼に会える。


『私』の口許に笑みが浮かんだ。
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