時の彼方に君がいた



佐野山の公園を下りると


下の町はさっきより幾分か賑やかになっていた。


休日にはしゃいでいる、朝から元気な
小学生に、


今日も仕事なのか信号を待っているおじさん。


部活に向かっているらしい、テニスラケットを持った中学生の女の子。


車道の交通量はそれほどではないが


低いエンジン音が重なって私の鼓膜を揺らした。


「朝からみんなどこ行くんだろね」


口に出して呟くと


となりで信号待ちをしているおじさんがちらりとこちらを向いたので


ぱっと口を抑えた。


(いまさら抑えても意味ないよ)


脳内に揶揄の声が響く。


信号が青に変わり


私は機械のように足を前に踏み出した。


ふと、前から横断歩道を渡ってくる


カップルの男の子に目がいく。


「……水野……くん?」


青色のパーカーを羽織った綺麗な顔の少年が、


彼女らしきストレートヘアの女の子に笑いかけている。


水野くんだ。


しかし、水野くんは私の存在に気づかなかったらしく、


彼女の手を握って横を素通りして行った。


行く方向からして駅に向かっているのだろうか。


首を傾げて前方に視線を戻すと


青色が早くも点滅している。


道路の真ん中で立ち止まっていたことに


いまさらながら気づいて


私は慌てて残りを渡り切った。
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