時の彼方に君がいた
「ねぇ、さっきのって起こしてくれたの」


授業が終わると僕は体をひねって


後ろの席の少年に尋ねた。


「うん、昨日、授業中に寝てたら起こしてねって言ってただろ」


「……そうだっけ」


「……ひっで、藤音ひでぇ」


彼は口を尖らせながら


瞳で笑ってみせた。










水野 遼太、僕のクラスメートで


新学期が始まってから


ずっとすぐ後ろの席にいる少年


お調子者で明るくて


がさつともとれる


カラッとした性格をしているが


その外見は少女のように美しい。


色素の薄い髪に白い肌


外見には無頓着だと


自負している僕ですら見惚れる


愛らしい桃色の唇。


水野とは去年も同じクラスで


美少年然とした見た目と


悪ガキの小学生のような中身との


ギャップに面食らったのを覚えている。





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