時の彼方に君がいた
「先輩方ぁ、なんか面白い話ですか?
うちらも混ぜて下さーい」
笑い声に気づいた後輩二人が真剣な顔をして描いていた絵をほっぽって、
僕と杏子先輩の側にやって来た。
元気な声を上げたくりくりの目のポニーテールが早月。
いつもにこにこしてほわっとした空気を醸し出しているのが千広。
四月にセットで美術部に入部して
以来皆勤を遂げている大物2人組だ。
「うはぁ、杏子先輩、やっぱ激うまですね」
杏子先輩が描きかけている油絵を覗きこんで、早月が歓声を上げた。
「ほんと、わたしも上手になりたい」
早月の言葉に千広がうなづく。
「……わたしはそんなうまいことないんだけど」
後輩の賞賛に、杏子は照れたような
困ったような顔をして言った。
「翼、今、おもしろいもん描いてるよね」
杏子先輩に話を振られた僕は肩をすくめて見せ、
前にある引き出しから画用紙のデッサンを取りだし、三人に向かってぱっと広げた。
早月が目を丸くする。
「わたしじゃないですかっ」
千広が小さく吹き出した。
白い画用紙に描かれているのは
まぎれもない早月の顔だった。
本物ではありえない憂いを帯びた表情の早月が
ぼんやりと何かを見つめている。
「よ、よく似てるね」
千広が肩を震わせて言った。
「……似てる…さすが先輩…でも」
少しほうけた後、
早月は杏子先輩に向かってぷぅっと頬を膨らませた。
「わたしって先輩の中で『おもしろいもん』ですかっもはや人ではない的なっ」
僕も衝動的にふきそうになり、
変な音を出さないよう、口に手を平を当てた。
「たしか、千広ちゃんの顔も描いてたよね」
「ちょ、先輩スルーしないで下さい」
早月の嘆きに
千広が今度こそ声をあげて笑いだす。
一年生二人のおかげで
今日も美術部は寂しいながらも賑やかだ。
この二人がいれば
来年一人で美術室の番をするようなことにはならないだろうと、
僕はひそかに安堵していた。
うちらも混ぜて下さーい」
笑い声に気づいた後輩二人が真剣な顔をして描いていた絵をほっぽって、
僕と杏子先輩の側にやって来た。
元気な声を上げたくりくりの目のポニーテールが早月。
いつもにこにこしてほわっとした空気を醸し出しているのが千広。
四月にセットで美術部に入部して
以来皆勤を遂げている大物2人組だ。
「うはぁ、杏子先輩、やっぱ激うまですね」
杏子先輩が描きかけている油絵を覗きこんで、早月が歓声を上げた。
「ほんと、わたしも上手になりたい」
早月の言葉に千広がうなづく。
「……わたしはそんなうまいことないんだけど」
後輩の賞賛に、杏子は照れたような
困ったような顔をして言った。
「翼、今、おもしろいもん描いてるよね」
杏子先輩に話を振られた僕は肩をすくめて見せ、
前にある引き出しから画用紙のデッサンを取りだし、三人に向かってぱっと広げた。
早月が目を丸くする。
「わたしじゃないですかっ」
千広が小さく吹き出した。
白い画用紙に描かれているのは
まぎれもない早月の顔だった。
本物ではありえない憂いを帯びた表情の早月が
ぼんやりと何かを見つめている。
「よ、よく似てるね」
千広が肩を震わせて言った。
「……似てる…さすが先輩…でも」
少しほうけた後、
早月は杏子先輩に向かってぷぅっと頬を膨らませた。
「わたしって先輩の中で『おもしろいもん』ですかっもはや人ではない的なっ」
僕も衝動的にふきそうになり、
変な音を出さないよう、口に手を平を当てた。
「たしか、千広ちゃんの顔も描いてたよね」
「ちょ、先輩スルーしないで下さい」
早月の嘆きに
千広が今度こそ声をあげて笑いだす。
一年生二人のおかげで
今日も美術部は寂しいながらも賑やかだ。
この二人がいれば
来年一人で美術室の番をするようなことにはならないだろうと、
僕はひそかに安堵していた。