彼がヤンデレになるまで
「本当だ、温かい」
後ろから抱きすくめられた。
氷に触られた気分。思わず突き飛ばそうと手を出すが――
「救って、良かった」
“手を差し伸べたくなる声”を出すものだから、離せなかった。
「こんな温かくなるなんて。あの時は、冷たかったのに」
死人の体温から、生きた人の温もり。
よく感じられたのは、他でもないカルツが――死人と差異なかったからだ。
空っぽの人とは何も赤ん坊だけでなく。
「生きた心地がする」
それを、抱きしめる。
「名前、教えて。俺も教えるから。呼びたいし、呼ばれたい」
「……」
馴れ合うつもりなんかない。出ていくつもりでもいたのに、“猫”は――