box of chocolates
順調そうに見えた恋
 初詣の翌日から、店はいつも通り営業を始めた。貴大くんは、土曜日から開催されるレースに向けて、トレーニングを始めた。貴大くんとは、ずっと前から知り合いのように思ってしまうけれど、よく考えれば、初めて会ったのは三月の終わり。まだ一年も経っていなかった。一年前はお互いを知らなかったし、私は八潮さんの愛に翻弄されていて、次の恋をするなんて、考えてもいなかった。出逢いって、突然だな。親に紹介してもらえるみたいだし、一年もしないうちに結婚? 一年経っていなくても、貴大くんならOKかな? なんて、店の外を掃除しながら、ひとり頬を緩ませていた。
「杏ちゃん」
 掃除の手を止めて振り返ると、そこには、優芽ちゃんと男性の姿があった。
「初詣の帰りにケーキを食べに来たよ」
 優芽ちゃんは生チョコを渡せなかったけれど、うまくいったんだ? と自分のことのように嬉しくなった。手をつなぐふたりを見て、こちらが頬を赤くしながら店内へと案内した。



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