box of chocolates
「浩輝!」
 御幸さんがやってきて八潮さんに声をかけた。救われた。
「競馬開催が終わったら金山さんと食事に行くんだけれど、来るか?」
「すみません。今日は、彼女とふたりで食事に行きます」
 また勝手に決める……。私は行く気なんてさらさらなかった。
「おお、そうかそうか。今度は、ワシも誘ってくれよ」
 御幸さんは、八潮さんの肩を叩いて、笑顔で帰っていった。
「今日は、戸田さんの応援に来たんです。一番前で、レースを観てきます」
「じゃあ、オレも行く」
 来なくていいよと思いながら、ズンズンと先を急いだ。メーンレースが終わったからか、観客がまばらで、一番前の柵のあたりで観られた。
「このレースで戸田さんが負けたら、オレと食事ねっ?」
「ああ、いいですよ! 戸田さんは勝ちます」
 なんの根拠もなく言い切ったところで、レースがスタートした。

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