box of chocolates
予期せぬ事態
翌日、うちの店に珍しく八潮さんがやってきた。
「杏、この間はおじゃまして悪かったね」
「いえ。ごちそうさまでした」
「今年のクリスマスは、川越先生とコラボして新しい作品を作るから、この店に顔を出す機会が多くなるよ」
「そうですか」
 そっけない返事をした。
「八潮くん、わざわざ悪いね」
「よろしくお願いします」
 私は、父と話をしている八潮さんの背中をぼんやりと眺めていた。
「杏、ちょっと」
 急に、父に呼ばれてドキッとした。慌てて近づく。
「今の時間帯はお客様が少ないから、杏も一緒に厨房にきなさい」
「はい」
 厨房に入って、パティシエたちの補助をする。私は、まだひとりでケーキを作ることは許されなかったけれど、季節限定商品のアイデアを出したりして、以前よりはパティシエらしくなってきた。


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