愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
「…両親…ですか?父は、普通のサラリーマンですが…」
「あら…そうなの…」
着物の襟を直しながら不服そうにため息を漏らす。
「じゃあ、真央さんはどちらの大学に通ってらっしゃるの?何か習い事は?お茶やお花は?」
「あの…私は短大でしたので、今は銀行に勤めてます。習い事は、何も…」
「まぁ~何も?これから高岡商事の社長になろうって人の相手が…何も出来ないなんて…せめて名取くらいにはなってもらわないと…恥をかくのは龍司さんなんですからね」
「…はぁ…」
場の空気が一気にどんよりして、なんか、嫌な雰囲気…でもお母さんは、そんな事全く気にする様子もなく喋り続ける。
「高岡商事の社長の妻ともなれば、政界や財界の方々とのお付き合いもあるのよ。それなりの教育を受けた方じゃないと…心配ねぇ…
高岡商事はね、私の祖父と父、そして兄が一生懸命守ってきた会社なの。龍司さんの代で傾く事になったら私は実家に顔向け出来ないわ。だから龍司さんの妻になる人には、公私共に支えてくれるしっかりした方をと思っていたのに…」
「母さん、やめてくれよ。真央は俺を十分支えてくれてるよ」
その後も龍司が必死で私を庇ってくれたけど、お母さんは聞く耳を持たない。
やっぱり、そうなんだ…私なんかが龍司の妻になれる訳がない…
ガックリ肩を落としシュンとしてると、香苗さんがお茶を運んできてくれて、遠慮がちに私達の前に置く。
「ちょっと!香苗さん…これは?」
お母さんの冷ややかな声に香苗さんの体がビクッと反応した。
「あの…おめでたい席ですので、桜茶を…」
「おめでたい?まだ何も決まった訳じゃないでしょ?…本当、困った人ねぇ」
「すみません…」
さっき玄関で話した時とは全く違う。消え入りそうなか細い声。
まだ何か言いたげなお母さんだっが、お父さんの「いい加減にしなさい!」の一言で、やっと口をつぐんだ。