同期が急に変わったら…。〜将生side〜




食後、風呂を済ませて、

俺はまたパソコンで仕事をしていた。





いずみは、様子を見計らって

温かいお茶を淹れてくれた。






テーブルの上に湯呑みを置いて。



いつもは向かいの椅子に座るくせに、

なぜか今日は、俺の隣の椅子に座った。





珍しいな。





かと思えば、

少し身体を傾けて、

俺のパソコンの画面を覗いてくる。






微妙に近くなる俺達の距離。





フワリといずみの髪の匂いがする。

手を伸ばせば、

すぐにでも抱きしめられる程、近い。





パソコンをパタンと閉じて、

広げてある書類を纏めた。






『残りは明日。』

『いいの?』

『いんだよ。』





いずみは俺の顔を心配そうに見ている。






もう、仕事なんか手につかない。

やめた。





『いずみ。』





もうダメだ。

こいつにやられまくりだ。






俺は横向きに座り直し、

いずみの身体もグイっと横向きにして、

俺の方へと向きを変えさせた。





いずみの膝を俺の足で挟み込み

ガッシリと固定。



向かい合う俺といずみ。




もう、限界だ。






『なに?』

『お前、可愛いな。』

『なっ、なに言い出すのよ。
可愛くないわよ。』

『いずみは可愛いよ。』

『……。』






可愛いと、思ったままを口にしたら、

いずみは黙ってしまった。






でも、それがヤバかった。






しーんとなる部屋の中。






いずみの髪にそっと触れて、

ただいずみを見つめていた。





愛しくてたまらない。





『いずみ。』

『はい…。』






もう限界だ。





チュっ。





いずみにキスをした。

唇に触れただけの軽いキス。






心臓がドキドキと鳴る。






『将生?』





いずみが俺の名前を呼ぶから、

俺は、ただ微笑んだ。

……何も言えなかった。





いずみも何も言わなかった。





沈黙が続き。





こいつと居て、

沈黙が怖い事なんて無かった。





でも、今はこの沈黙の時間が怖くなる。

いずみの反応がただ怖かった。








キスくらいで緊張してどーする?

ガキじゃあるまいし。






『寝るか?』





もう、随分遅い時間だ。






『将生、明日は会社行くの?』

『午前中だけ行く。』

『そっか。じゃあ、寝よ?』







タバコを吸って、お茶を飲み干した。

いずみも、俺の隣でお茶を飲んだ。





また沈黙。

静まり返る室内。






俺はまた先に寝室に行き、

ベッドの脇に座った。






マズいな。

キスしたの、タイミング悪かったか?




でも、抑えられなかった。





『何時に起こせばいいの?』

『7時頃かな。』

『7時ね。』





いずみは、

携帯のアラームをセットし始める。





ん?





この前、目覚まし時計使ったろ?

今日は、携帯のアラームか?





目覚まし時計を使わないのか、

と聞くと

音がすごいから使わないと言う。





前に使っただろ?






問い詰めると、

前は、俺の行動の意味がわからず

イタズラ目的で使ったらしい。

で、

結局自分がハマったんだ、と。





なるほどね。

しかし面白すぎだ。

可笑しくて、腹から笑った。





『…ごめん、ね?』





今更、謝るいずみ。





『どーすっかなあ?』






座ったまま、

いずみの身体を抱き寄せた。

朝の様に、

いずみのお腹に顔を埋めた。






『で、今は?』

『えっ?』






今日は、少し話そう。

しっかり話さなきゃ前に進まない。






いずみを腕から離して、

俺が座るベッドの横に座らせた。






『今なら俺の行動が理解できるか?』


『……どうかな。』


『俺、かなりどストレートに
伝えてるつもりだけど?
まだわからないか?』






いずみの顔を覗き込むと、

少し困った顔をしている。






『だって、どう受けとればいいのか
わかんないんだもん。
冗談なのか、本気なのか、
わかんないよ。』





冗談だと?

アホか。

こんな事、冗談で出来るかよ。





はーっ。



溜息が出た。






『あのな。
俺は冗談でなんか言ってない。
いずみ。
もうそろそろ、折れろよ。』






真剣にいずみと話し始める。





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