同期が急に変わったら…。〜将生side〜



しばらく黙っていたいずみが

ポツリと話し出した。






『ねえ。
気持ち悪い事、言ってたらごめん。
将生。私の事、好きなの?』





今更かよ。





『やっとか。そうだけど?』


『友達としてじゃなくて、
女として好きなの?』


『当り前だろ?』


『……。そうですか。』


『お前、俺が言わなきゃ
自分の気持ち、出さないだろ?』


『えっ?なっ、何が?』


『お前は、
ずっと俺の事好きだっただろ?』


『……。』







……やっぱりか。



図星だったか。

自信は無かったが、聞いてみた。

おそらく当たってる。







あの日、

そう感じた俺は間違ってないな。







それは、

俺がまだマーケティングにいた頃。






酒に強いいずみは、

酔い潰れる事は殆どない。

なのに、その日は、潰れた。






付き合っていた彼氏と別れたらしく、

珍しく酔い潰れたいずみを

タクシーから背負い、

いずみのマンションの部屋まで運んだ。





その時の会話だ。





『いずみ。男なんて、山ほどいるだろ。
もっといいヤツが見つかるよ。』

『もう男なんていらない。
将生がいれば、なんにもいらない。』

『ハハッ。
俺はいつもおぶってやらないぞ。』

『え〜。将生ぃ。
ずーっと一緒にいてよ〜。』

『……。』

『なんで分かってくれないかなあ〜。』

『……。』

『あ〜あ。将生のバカぁ。鈍感〜。』






これは、いくら鈍くても

ん?ってなるだろ?






でも、次の日のいずみは

いつも通りのいずみだった。

っつうか、覚えてなかった。






『ねえ、昨日ごめん。
送ってくれたの?』






いずみは、

いつもの笑顔でそう言った。






俺は、全てを聞かなかった事にした。






多分、こいつはその頃から

俺を思っていたんだろう。






いずみ、ごめん。






今、俺の隣で黙り込むいずみ。

昔、そんな事を自分が言ったなんて、

こいつは知らない。






『もういいだろ?』

『いいって?』

『ったく。ムカつく。
もう素直になれって。
わかってるから。』

『は……あ。』

『悪かったな。』

『……なんの事?』

『待たせたな。』

『………。』

『いずみ。』

『…はい。』

『もう、いいよ。隠すな。』

『……。』







黙秘権でも使うつもりか。






黙り込むいずみをグイッと抱き寄せた。

ぎゅうっと腕に力を込めて、

強く強く抱きしめた。






『ごめんな、いずみ。』

『……。』

『いずみ、俺から離れんなよ?』

『……、いいの?』

『まあ、俺が離さねぇけどな。』






そう言って、

いずみをまた強く抱きしめた。

熱くなる心と身体。






いずみは、

『いいの?』

と、一言だけを口にした。






でも、

その一言に全ての思いを感じた。

いずみの全ての思いが

込められていたように思えた。







いいの?




………いいに決まってる。





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