同期が急に変わったら…。〜将生side〜



『ありがとうございました。』





東亜の契約を済ませ、商談を終えた。






商談はすんなりと進み、

特に問題点もなかった。






問題点があるとすれば、

それはこれからだ。







『藤森君、桐谷さん、お疲れ様。
これからも、よろしく頼むよ。』

『いいえ、
こちらこそよろしくお願いします。』

『よろしくお願いします。』







いずみと二人で頭を下げた。







専務、こっちに近づく気だ。




俺は、

頭を上げてすぐに一歩前に出て

いずみを後ろ手で俺の影に下げた。






案の定、専務はすぐ側に来ていたが、

俺が邪魔になり

いずみに触れられなかった。







触らせるかよ。

毎回上手く行くと思うなよ。

今日は俺がついてる。






『桐谷さん、
今日こそは飲みに行けるかね?』






凝りもせず、

今度はいずみを飲みに誘う専務。





『専務。ありがとうございます。
ですが。
桐谷はまだ仕事を抱えておりまして。
今日は、
これで失礼させていただきます。』






キッパリ断ってやった。

俺が。






さすがの専務も諦めたようだ。






最初から諦めろ。

まあ、契約もらったから許してやるか。








俺といずみは

社用車に乗り込み、会社に向かう。





『お疲れさん。』

『将生、あんたやっぱりさすがだよ。』

『何が?』

『何においても。』

『そうか?惚れ直しただろ?』

『………。』






そこは黙るのか……。

惚れ直した、くらい言ってみろ。






俺の視界の中の助手席のいずみは

黙ったまま

助手席の窓の外を見ている。






お前が思ってる事は

だいたい分かってるから。

なかなか素直になれないんだろ?







そんないずみの頭を優しく撫でて、

また、いずみの手を握った。






『運転、大丈夫?』

『なんで?片手だからか?』

『う…ん。』

『余裕。』

『ふーん。』







いずみは、

いずみの右手に重なる俺の左手に、

自分の左手も重ねてきた。

俺の左手を両手で包みこんで、

ぎゅーっと握ってくる。






『どうした?』

『将生の手を拘束中。』

『ふっ。』






……押し倒すぞ。

一生握ってろ。







握った手に力を込めた。




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