甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
「うわぁ~、今日も美味しそう。」


目の前に置かれた
懐石料理に思わず声が漏れる。


「美味しそうじゃなくて
美味しいんだからね。早く召し上がれっ」


と、
この店の主であるユズさんが
ウインクつきで言う。


うっ……。
か、可愛い……。


「お前、何、ユズ見てぽけぇっと
してんだよ。さっさと食え。」


「ほんっと、食え食えって口が悪いんだから……言われなくても食べます。」


はぁ……。
一人で来てるんじゃなかったんだ。
なんでこんな人と……一緒にご飯だなんて。
兎に角、食べようっと。


ユズさんのウインクにまだ少し
ドキドキしながらも
細かく仕切りで区切られた
漆塗りの器の一角にお箸を差し込む。


「うう~ん、美味しいっ!」


「でしょう?
まぁ、本格的じゃなくて
あくまでも懐石風だけどね。
だけど、おもてなしの心は
たぁっぷり入ってるわよ。」


と、流行りのポーズを真似て
ユズさんが言う。


「はい、本当に心のこもった
お料理だって言うのがよくわかります。
一つ一つ手がこんでいて……
とっても丁寧に作ってるんだなって
伝わってきます。」


「あらそお?
本当に良い子見つけたわね、サトル
確か胡桃ちゃんだっけ?
口は悪いけど根はそこまで悪くない人だから
サトルのこと見捨てずに宜しくね。」


「なんだよ、その口は悪いだの
見捨てるだのって。
好き勝手言いやがって。
保護者見てぇなこと言ってんじゃねぇよ。
忙しいんだろ?
ここは構わなくて良いから
奥に行ってこいよ。」


「ハイハイ、邪魔物は
消えますよーだ。」
と、言い残してユズさんは奥の
調理場へと行った。


「仲良いんですね。」


どうしてこの二人は
付き合わないんだろうなんて
疑問が頭に浮かぶ。


「なんだよ。
なんか言いたい事でもあんのかよ。」


「えっ、わかります?」


「お前さぁ、お前と
アニメのキャラくらいじゃねぇの?
ここに何でも書いてあるの。」


と言って前髪を上げて
おでこを出すサトルさん。


ここに……って……
はっ!


「それって、キン肉マーーーー」
「だから、なんだよ。
言いたいことあるんだったら
言えよ。どうせ、ユズのことだろ?」


うっ……バレてる。


「……はい。
とてもお似合いなのにどうして
お二人は付き合わないんだろうって……。」


思いきって聞いてみた。


「無理だな。」


「えっ?どうして?
あんなに綺麗だしお料理も
上手だし……。」


「なぁ?
お前は俺とユズが付き合ってほしいわけ?」







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