お前は独りなんかじゃない。









雨に濡れたあと、そのまま襲われて
風呂入って、髪濡れたまま。


ーーーそりゃ風邪ひくだろ。


俺は体温計を優希に渡し熱を計らせた。



ピピピピピピ



計り終わったみたいだ。



「38.7か....」


なかなか熱があるな。
家に帰らせた方がいいな。これは。

帰らせたくないが...
こんな高熱だったら仕方ないな。



「おい、優希。」

『なぁに?』



喋りかたまで変わってる。
なんだか可愛い。



「お前さ熱あるから家に帰れ」

『...え?』

「熱、あんだよ。お前。」

『.....。』



黙り込む優希。



「聞いてんのか?」

『....いじわる』

「は?」

『いじわる...優斗の...いじわる!』



そういって優希は布団を
頭までかぶった。



「んだよ...」



俺はなぜかイライラした。
なんだかはわからねぇけど...



「おい!お前話くらい聞けよ!」


俺は思いっきり布団を奪った。
優希はうずくまっている。

また泣いてる。
俺は一気に罪悪感を覚えた。
優希が少し大きめな声で叫んだ。



『お家に帰るくらいなら死にたい...!』

「....え?」

『お家帰ったらまた...独り...に...なる』



優希はそういった。

優希は家が嫌いなのか...。
なにがあったんだ?
でもいまは聞けない。


俺はうずくまる優希に布団をかぶせた。


「お前が帰りたくないなら帰るな」

『....いいの?』

「ん。いいよ。俺、薬局行って
薬とか買ってくるから寝とけよ」



俺が立ち上がろうとすると優希が俺の
服の裾をギュッと、さっきよりも強く
握った。



『行かないで....』

「でも薬ねぇと治らねぇよ?」

『優斗がいれば風邪なんて大丈夫...』


優希はあまりにも可愛くて
薬局は明日でもういと、そう思った。



「じゃあ。ちょっと待っとけ。」



俺は冷蔵庫ヘ行き冷えピタを
持ってきて優希のおでこに貼った。


『ちゅめたっ...』


一瞬顔をしかめる優希。
なんだよ、ちゅめたっ...ってww


『はやく...隣に寝て?』


優希が俺の指を引っ張る。


「ん。そだな。」


俺は優希と少し距離を取ってベットに
入った。
すると優希は俺に近づいてきて
俺と体をくっつけた。


「....お前なにやってんの?」

『一緒に寝るのに...遠くちゃいやぁ...』


優希は、はぁ。はぁ。いいながら
俺の耳元でしゃべる。



『ねぇ。優斗...』

「なに?」

『キス...して?』

「.....は?」

『いやだ、なの?』



嫌なことないけど、できるか!ばか!



「それは無理だ...」

『なぁ...んでぇ?』

「.......理由はねぇけど。」

『キスしたことないのぉ、だから
優斗と初めてのキスしたいのぉ!』


優希は風邪を引いているせいか
妙に俺にべったりしてくる。

俺も平然じゃいられなくなってきた。




ーーーーーーー。




「はい、キスした。」


やっちまった。
ごめん。と謝ろうとした。


『ゆうとぉ...短かすぎてわかんないぃ』


は?なにいってんだこいつ?
ばか?わざと短くしたんだけど。


『長い....キスしたいなぁ...』

「....っち。」


俺は舌打ちをした。


『ん?怒ってうのぉ?』

「ああ、そうだよ!!」

『ご、ごめぇんねぇ...うっぐ...』

「お前もうどうなってもしんねぇよ?」

『なにがぁ?』

「嫌とか言っても止めてやんねぇから」



俺はそう言って優希に顔を近づけた。



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