恋するイフリート

「まず…、イフリートの封印を解いた人間…。

 これは、もう誰かお解りですよね?

 …そう…、葵さんの事です…。

 イフリートは、私のかけたまじないによって

 葵さんを本当の意味で幸せにしなければ、

 封印は完全に解けたとは言えません…」


カリフのこの発言を受けて、葵とイフリートの視線が無言で絡み合う…。


「続いて…

 イフリートの魔力の発動条件…。

 これも、イフリートに勝手な真似が出来ないよう、私のかけたまじないの一部です。

 イフリートが魔力を使うには、『葵さんの願いを叶える為』という条件が

 必要不可欠です。

 何故、最初、イフリートの魔力が発動しなかったのかと言うと、

 それは、己の私利私欲の為だったから…。

 だから…ごらんなさい!

 葵さんの、望みを叶える為なら、あなたの魔力、使えたでしょう?」


「…………」

「………」

「……」


全ての謎が解け、一同が思わず沈黙を守る中、カリフだけがニッコリと満面の笑を浮かべていた…。


「……ふっ…ふっざけんなよっ!!馬鹿野郎っ!!」


最初に沈黙を破ったのは、

体全体を怒りにブルブルと震わせたイフリートだった…。


イフリートの第一声に、カリフが

『その言葉、そっくりそのまま貴方がたにお返しします♡』

と思ったかどうかは…定かでない…。


「この大魔神イフリート様ともあろう者が…

 こんなみすぼらしい小娘の奴隷だとっ!?

 ふざけんなっ!!!」


怒りに体を震わせながら、力いっぱい暴言を吐くイフリートを

葵が睨みつける。


『みすぼらしいっ!?小娘っ!?』


「あっ、あたしだって!!

 こんな高飛車で頭の悪そうな男お断りよっ!!」


「あ、頭が悪そうっ!?何だとっ!?この小娘っ!!」


世の中、言って良い事と悪い事があるという事を、この二人はこれから学んで行かなければならなさそうだ…。


お互いの暴言に、すっかり頭に血が上り

「ガルルルル~~~!!!」

と睨み合う二人の間に、カリフは『やれやれ…』と言った風に割って入る。


「葵さんっ!あなた、ある意味これはとてもラッキーな事ですよっ!

 あなたは、かの有名な物語の『アラジン』と同じ立場なのですっ!

 ランプこそ無いものの、あなたの望みは、この大魔神イフリートが

 全て叶えてくれるんですよっ!

 どうですっ!?素晴らしいでしょう??」


カリフの言葉にイフリートが怒声を発する。


「カリフっ!!テメエ、いい加減にしろっ!!」




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