【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
*****

「…伊坂、お手柄だ…良くやった。」

自販機で伊坂の分の缶コーヒーを

買って渡すと

「…ありがとうございます。」

まだ、緊張感が抜けてない伊坂は

固い表情で受け取った。

***

あの後、総務部へ行った俺と伊坂は

出勤していた総務課長、人事課長

総務部長に事情を説明した。

会議室に通され

同じく出勤していた、経理部課長達

そして

笠置の浮気の証拠集めに奔走した

経理部の綿貫や人事課の正田も呼ばれ

全員の前に伊坂と、伊坂の弟が撮った

あの証拠写真が全て提出され

笠置と豊島の浮気の事実が

晒される事となった。

何よりも証拠を目撃して

撮影に成功した伊坂の説明と

綿貫、正田の集めた証拠によって

疑惑は決定的真実へと変わった。

揉み消しを謀ってきた経理部課長達は

その真実に唖然とし

総務部は笠置と豊島の嘘を見破り

「経理部全体の建て直しが必要だな。」

と呟いた後

「伊坂君だったね…?
勇気ある証拠提出に感謝するよ。
氷室部長も伊坂君を
連れてきてくれてありがとう。
綿貫と正田もご苦労だった。
経理部の件はこれから審議して
処分を決める。」

と言って、解散になった。

綿貫と正田は同郷の後輩に助けられ

笠置下ろしと揉み消し不能が

実質成功しただけでなく

自身達の昇進も

これでほぼ決定的となり

綿貫と正田は抱き合って喜び

男泣きで涙を流しながら

固い表情のまま戸惑う伊坂に

何度も感謝の握手をして

喜びを爆発させていた。

俺はその様子を見ながら

笠置と豊島に制裁を与えられる事や

羽美花を絶望から救える事に安堵した。



自販機のコーヒーを飲みながら

ネクタイを撫でて彼女を想う。

君が愛した男と

君からアイツを略奪した浮気女を

あの場所にいた者達が

引き摺り下ろした。

こんな事君には言えないし

こんな光景は到底見せられない。

でも、俺はこれで良かったと思ってる。

駅で会った時の君の泣き腫らした顔。

『裏切られた』と嗚咽混じりで

俺に縋って泣いた彼女の傷みと悲しみ。

靴擦れで傷ついた彼女の両足。

愛している彼女の

ボロボロに傷ついた心と体を

傷ついたままにしたくはなかったから。

傷つけた者には制裁が必要だから。




















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