【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
***

「…この卵焼き美味いな。」

と、言いながら私の作った朝食を

残さず食べてくれた。

身支度をして

マンションから持参したスーツに

着替えた咲輝翔さんの胸元には

私がプレゼントしたあのネクタイと

ショッピングモールで

選んだネクタイピン。

「…良かった。似合ってます。」

そのネクタイピンを指でなぞると

「…ありがとう。大切にするよ。」

彼は私を引き寄せた。

…今日が始まる。

いつもより何だか…不安になる。

その時

「…羽美花…こんな時だけど
いつも通りに仕事してろ。
何も心配しなくていい。
余計な事言う必要ないから
何か言われても適当にかわしておけ。」

そう言って彼は私の右手を握ると

軽く持ち上げて薬指に輝く指輪に

優しいキスを落とした。

そして、私の首元に揺れる

ネックレスを見ながら

「…俺の事だけ想ってればいい。」

そう呟いて私の唇にもキスをすると

「…じゃあ、先に行くから。
気をつけて来いよ。」

と、もう一度キスをした彼は

コートを着てビジネスバッグを持つと

「…行ってくる…羽美花。」

ドアを開けてアパートを出て

車に乗り込んで会社へと出掛けた。



窓から彼の車が

見えなくなるまでジッと眺めた。



いつもとは違う朝の光景。

朝起きた時、隣で寝息を立てていた

彼の唇にそっとキスをした。

温かい唇に触れて

夢じゃないと実感した。


もう少ししたら

私も出社しないといけない。

昼休みに花菜子に

満君と別れた事を話さないといけない。

でも、社内で満君と

顔を合わせてしまったら

何て話せばいいか…。

そう思いながら私は

食器を洗おうとキッチンへと戻った。




この時の私は何も知らなかった。

彼に助けられた翌日の

休日出勤日に彼達が既に

満君と豊島さん達に対して

制裁を与えるべく動いていた事を。



そして

花菜子達経理部も出社してから

この件に動揺が走る事も…。

















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