【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
追い詰められてさすがに心が折れた私は

高熱を出して2日間会社を休んだ。

咲輝翔さんからは

何度も電話がかかってきたり

メールも来たけど

私は電話に出る気にもなれず

メールも返信出来ずにいた。

花菜子からも

『羽美花と連絡が取れないと
氷室部長が心配してる。』

『私には連絡して』

とメールが入っていた。

「心配かけてごめん」とだけ返信した。

彼は差し入れを持って

わざわざアパートまで来てくれたけど

会うのも躊躇い

寝ていて気づかないフリをして

居留守を使って避けていた。

インターフォン越しに見る

彼の心配してくれているような

表情に私の胸は苦しかった。

彼が諦めて帰った後

ドアにかかっていたプリンやヨーグルト

スポーツドリンクなどが入った

スーパーの袋の中身を見る度に

涙をポロポロ流した。

『寝ていたのか?
早く良くなってくれ。
差し入れ置いといたから
食べられそうなら食べておけ。
出来れば連絡欲しい。』

と、メールが来ていた。

携帯を握りながら私は泣いた。


…本当は抱き締めて欲しい。

キスして欲しい。

抱いて欲しい。

そばにいて欲しい。

話を聞いて欲しい。

『大丈夫だ』と慰めて欲しい。

『羽美花だけ』だと囁いて欲しい。

助けて欲しい。

会いたい…好き…愛してる…。

だけど、好きなのに…会うのが怖い。

別れないと言い切ったのに

何だか私はあの男性の言葉と

嫌がらせにコントロールが

鈍り始めていた。


脅かされて過ごす日々。

恐怖に怯える日々。

彼からいつ切り出されるかわからない

『別れの言葉』に不安を抱える日々。

心を塞ぐ薄暗い雲の下で

花達も泣いている。

救いを求めて…愛を求めて。

彼は多分

私の様子がおかしい事には気づいてる。

花菜子だってきっとそう。

だけど、私…言えないよ。


『助けて』と言いたいのに

手を伸ばしたいのに…。

それが出来ない私は、一人の部屋で

彼からプレゼントされた『天使の花』に

そっと触れて、指でなぞった。
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