イジワル同期の恋の手ほどき

「ねえ、さっきのお弁当箱見せて」

テーブルに着くなり、さっき買ったばかりの紙袋を開けようとして、止められる。

「おい、恥ずかしいから、やめろ」

南街に来たら、かなりの確率で立ち寄るこの店は鶏料理の専門店で、とくに焼き鳥がおいしい。
鶏好きのふたりのお気に入りの店だった。
店内は広く、宴会客から家族連れまでが楽しめる、リーズナブルな価格設定になっている。
注文を取り終えた店員が去っていくと、さっそく包みを開く。

「いいねえ、こういう渋いのも。宇佐原にこんな趣味があったとは、ちょっと驚きだけど」

「俺にもこだわりがいろいろあるんだ」

「ふーん」

頭の中ではすでにどんなおかずを入れようかと、お弁当の中身を考え始めていた。

「男の人のお弁当箱って、やっぱり大きいんだね」

「そうか?」

「ねえ、宇佐原はなにが好き?」

一瞬、宇佐原の顔から表情が消えた……。
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