イジワル同期の恋の手ほどき

お弁当修業三日目、少しずつ手際が良くなってきた。

今日の献立は、ミニ豚カツとアスパラベーコンとかぼちゃの素揚げ、プチトマトは彩りが美しくなるのと隙間を埋めるのに便利なので、毎日登場する。
もちろん、宇佐原の好物の卵焼きも毎日入れている。
昨日は五目豆も炊いてみたので、それも一品に加えてみた。
宇佐原が嫌いでないといいのだけど。今日はかなりの高得点を取る自信はあった。

けれども、食べ終わった宇佐原からは新しい注文が届く。

″スタミナばっちり。カツにもう少し、塩味効いてるとなおよし″

宇佐原のコメントを読んで少し落ち込んでいる時だった。

「泉田と木津、ちょっと」

営業一課の林野(はやしの)課長に呼ばれて、慌てて席を立つ。
泉田さんと一緒に私が呼ばれるって、何だろう、まったく心あたりがなかった。

席に戻ると、月世がひょっこりと首を伸ばして、「どしたの」と口パクで聞く。

「どうしよう。私、泉田さんと一緒に出張することになった」

「おめでとう! 良かったじゃない」

月世にバンと背中を叩かれて、やっと実感が湧いてきた。
< 21 / 93 >

この作品をシェア

pagetop