イジワル同期の恋の手ほどき
出発してから二時間半で、花とハーブの博物館に着いた。
数年前、博覧会の会場となった場所で、宿泊施設も併設されていた。
海が見渡せる展望駐車場はガラガラだった。
「まずは、温室でも、入ってみるか」
「今時、入場料がいらないって、良心的だよね?」
そんな会話を交わしながら、小高い丘一面に広がるハーブ畑を歩く。
ローズマリーや秋咲のセージが風にそよぐ姿に思わず笑顔になる。
ローズマリーの葉を軽く握った掌を、宇佐原に近づけると、その香りをかいで、「いい香りだな」と言って息を吹きかけるから、くすぐったくてすぐ手を離す。
こういういたずらは相変わらずだ。
ショップにはありとあらゆる香りグッズが並んでいて、夢中になって、あれこれ手にとって見ていた。
あれもこれも欲しい。
「時間はたっぷりあるから、ゆっくり選んだらいいぞ」
宇佐原は飽きもせず、そう言ってくれた。
やっと買う物を決めて、店を出ると、ちょうどお昼時。
「あっちの広場でお昼にするか?」
いよいよ、今日の本当の目的、ピクニック弁当の試食が始まる。
嫌でも緊張するのに、宇佐原は心底楽しそうにしていた。
レジャーシートを広げて、バスケットからおかずを取り出す。
ピクニックの定番、から揚げに卵焼き、ほうれん草のソテーにミニハンバーグ。
彩りに加えたのはかぼちゃサラダ。
俵形に結んだおにぎりの味は、梅しそのふりかけと梅干、鮭フレークの三種類。
海苔はパリッとさせるため、個別包装の味付け海苔を用意しておいた。
デザートはリンゴとキウイに、オレンジ。
「おおっ、がんばったな」
宇佐原の第一声に、緊張の糸が一気にほぐれた。
「良かった、合格?」
「それはまだ。味見してからな」
どこまでもえらそうだけど、宇佐原は口に入れる物すべてに、「おいしい」と言ってくれた。
「ねえねえ、今日は何点?」
「そうだな、九十五点」
「わぁ、やったー。すごい高得点」