イジワル同期の恋の手ほどき

「今、何時だと思ってる? 電車なんて、とっくにないぞ」

そう言われて、壁の時計を確認すると、すっかり真夜中だった。
いつの間にこんなに時間が経っていたのだろう。
宇佐原と過ごすことがあまりに楽しくて、時間なんて忘れていた。

宇佐原は、怖いくらいに落ち着いている。

「それに、湯上がりのそんな格好で帰れるわけないだろ。濡れた髪やスッピンを俺以外の男に、見せるなよ」

強い口調で言われて、心臓がまた高鳴り始める。

「タ、タクシーで、帰る……」

ソファから慌てて立ち上がると、宇佐原が腕を掴んだ。

「帰さない」

掴まれた腕に痛いほどの力が込められて、思わずごくりと息をのんだ。

「やっと捕まえたのに、このまま、帰せるわけないだろ」

宇佐原の瞳が揺れていた。
宇佐原が少しずつ、腕を引っ張るから、どんどん距離が近づいていく。
最後にぐいっと引っ張られて、バランスを崩し、宇佐原の胸に顔から倒れこんだ。

「ご、ごめん……」

慌てて体を起こそうとしたとき、そのままふんわりと宇佐原に抱きしめられていた。
湯上りの体の温もりが、シャツ越しに伝わってくる。


「なあ、俺にこうされるのは嫌か?」

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