イジワル同期の恋の手ほどき

「試す?」

「嫌だったら、逃げ出せばいい」

そう言って宇佐原は、体を離すと、今まで見たことがないほど真剣な目でじっと見つめてくる。

宇佐原の手が頬を優しくなでている。

ど、どうしよう、『試してみろよ』、『逃げ出せばいい』、宇佐原が言った言葉が、頭の中でグルグル回っている。

胸の奥がぎゅっと捕まれるような感覚に襲われる。


ゆっくりと、宇佐原の顔が、近づいてきて、そのまま私はゆっくりとまぶたを閉じた。



次の瞬間、唇が重なる。


それは、うかがうようにそっと触れるだけの優しいキスだった。
< 75 / 93 >

この作品をシェア

pagetop