滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「いきなり海外に行きたいって言い出して、英語は出来るから心配しないでって。だから私も特に勉強しなくてもいいかって思ったの」
ハンバーガーを掴んだまま俯いて、独り言のようにブツブツと呟き出す私。
「旅行なら国内でいいよ?って言ったのに、どうせなら有給取ってじっくり楽しみたいって言うから渋々了解した」
「あ、あの…」
「ーー必死だったのよ、彼に嫌われないようにって。彼の機嫌を取っていたらずっと側にいられるんじゃないかって感じてたから…」
きょとん顔で私を見つめる彼をよそに、私は遠い目をしながら一方的に喋り続ける。
「年上だし、私より大人だから無意識に背伸びしていい彼女を演じてた。彼と釣り合いたいから頑張って女磨きして…」
目の裏には走馬灯のように蘇る彼との記憶達。