滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「でも将来的には私が店を何とかしなくちゃいけないのかなって…、いろいろ考え中」
「何とかって?」
「それは…、まぁいろいろよ」
「ふぅん」
やんわりとはぐらかした私の言葉に、
彼は納得いかないような口ぶり。
きっと見合いの話なんて聞いたら彼の気持ちを逆なでするに違いないし、
逆に私に対する思いを知っているせいか話しにくい。
間違いなく食いついてくるだろうし、
たぶんダメって…言われそうだし。
「…俺は親の跡継ぎなんか絶対やだなー。どんなに頭下げられたってやらねー」
ため息混じりでポツリと呟いた一言がちょっと気になって、
私はおもいきって聞くことにしてみた。
「貴方の親って…どんな人なの?」
私の質問に彼は無表情のまま黙っていて、
その空気感はもしかしてタブーな話だったんじゃないかと感じてしまうほど張り詰めていた。