滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
あっという間に空には茜色の夕焼けが浮かび上がる。
さっきまでいた家族連れは仲良く手を繋いで公園を去って行き、
広い園内には私たちだけになった。
「日が落ちるのが早くなったなぁ」
「そうだね」
二人で遠い空を眺めながらボソボソと呟く。
吐く息も白くなって風も更に冷たくなってきた気がする。
「寒いから、そろそろ帰ろうか」
私はベンチから立ち上がり彼を見下ろす。
しかし彼はピクリとも動かず気配がない。
「ねぇ、奈緒子さん。俺のことさどう思ってる?」
「え?」
「好きとか、嫌いとか」
「そんな…いきなり言われても」
確かに彼に対しては他の誰よりも特別な感情はある。
だけど、それが恋愛感情なのかはまだ定かではなかった。
「じゃ…、藤堂と俺だったらどっちとキスしたい?」