滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

次の日。

昨日の衝撃事実にまだ頭がすっきり冴えていない私。



「結局眠れなかったしなぁ…」



歩く足取りも何処か重い。


気持ちの整理もついていないまま職場へ出勤すると、
オフィスの前の入り口に何故か人だかり。



「どうしたの?」

「あ!夏目さん大変だよ!!」


声をかけた同僚が私に気づくと、慌てて私の腕を引っ張り中へ連れて行く。




「なっ…!」




オフィス内で巻き起こっている光景を目にした私は思わず唖然としてしまった。



机と机の間の通路で俊介が尻餅をついた状態で、
そのすぐ近くで蒼が男の同僚に体を抑えられながら俊介を見下ろしている。




椅子は倒れ二人の周りには書類やファイルが散らばっていて、壮絶な状況なのは一目瞭然だった。



「部長!何やってるんですか!!」




私が急いで蒼に近寄ると、その横顔は物凄い剣幕で俊介を睨んでいる。



尻餅をついた俊介を目の当たりにすると、頬の部分が赤くなっていて口端から血が滲んでいた。

< 175 / 262 >

この作品をシェア

pagetop