滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「ーーちょっと大丈夫!?」
痛々しい生傷を目撃した私は咄嗟に俊介に近寄っていた。
私が俊介を心配する姿に蒼は眉間に皺を寄せ悔しそうに握り拳にグッと力を込めた。
「くそっ!」
目の前の光景が見るに耐えられなかったのか、体を抑える部下の制止を振り切った後、
野次馬達を掻き分け足早にオフィスを出て行く。
騒然とした空気の中、
他の同僚が何とかこの場の雰囲気を変えてくれて、沈静化した職場はようやく通常通りの仕事を始めた。
しかし蒼はその後一日姿を見せる事はなかった。
ーープルル、プルル…。
その日の仕事終わり、私は蒼の携帯に電話をかけた。
日中にも何度かかけたが繋がらずこれを最後にしようと思ったけど結局繋がらない。
ーーどうしたのかな…。
私の着信をあえて取らないのか、
それとも着信自体に気づいてないのか。
呼び出しから留守電に切り替わり、一言残しておこうと言葉を告げようした瞬間、
もしもしとボソッと呟いた声が聞こえてきた。