滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
あの状況がどんなキッカケで生まれたのかは予測が出来る。
だけど暴力がいけないことだ。
そこに如何なる理由があったとしても。
『今、何処にいんの』
「まだ会社前よ」
『今から迎えに行くからそこで待ってて』
そこで電話が切れて、
たった数分の通話が何十分にも感じられるぐらい重たい会話だった。
暫し会社の前で待った後、颯爽と一台のスポーツバイクが通りに止まった。
ーーもしかして…?
フルフェイスのヘルメットからは一体誰なのかわからないが、
何気なく近寄って見ると、シールド部分から見えた目元は間違いなく蒼だった。
そして、後ろに乗れと目線と顎を使ったゼスチャーと手渡されたヘルメットに私は恐る恐る後ろへ跨る。
ーー何か、怖い…!
ヘルメットを被り、初めて乗るバイクに恐怖心を感じて思わずギュッと背中にしがみつく私を、
だが蒼は何も言わずにスロットルを回しエンジンをふかす。
そのままマフラーから勢いよく白煙を吐き出しながら、
バイクは再び颯爽と走り出した。