滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
とりあえず念のためにパスポートに挟んでおいた僅かなドル紙幣を持って、
ホテルの売店へ軽い夜食を買いに行くことにした。
エレベーターに使って一階へ降りる。
週末のせいか広いロビーはたくさんの人で溢れかえっていた。
「えっと…」
ごった返すロビーを歩きながら案内を探して店を探す。
その瞬間ーーーー。
「!」
いきなりガッと背後から肩を掴まれ、ビクッと体がビクつかせた私。
そしてゆっくり振り返ると、
まさかの、あの彼がそこに立っていたのだ。
「お、偶然だね。どこ行くの?」
ニッとあのあどけない笑顔で笑いかける彼。
あまりにも驚いた私は一瞬唖然としたが、
すぐに我に返ってとっさに彼を問い詰めた。