滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
そう言うと、いいなぁ〜と羨ましそうに嘆いた。
「俺なんかオヤジにそっくりだって言われるぜ?マジやだ」
「何で?別にいいじゃない、親子なんだから」
「親子なんかじゃねーよ、あんなクソオヤジ」
フンと口をへの字にして怒る顔が何だが可愛らしくて、
私はつい吹き出してしまった。
「何で笑うんだよっ」
「だって反抗期が終わってない子供みたいな感じがしてさ。お父さん嫌いなの?」
「キライキライ!二度顔を見たくねーよ!!」
その荒々しい口調は相当強い思入れがあるようだ。
「親は二人しかいないんだから、大事にしないとダメだよ?この歳なってだけど、要約そう思えてきた」
親が歳を重ねていくたびに昔の元気だった面影が無くなっていって、少し寂しい気もするが、
それだけ自分も我儘や言い訳を出来なくなった年齢になった証拠だ。
「…俺にとっての親は母親だけ。父親は他人のようなもんだよ」
「そうなの?」
「うち離婚してっからさ。俺は母親に引き取られたの」
その言葉に驚きと共に、
蒼のナイーブな部分を抉ってしまったという申し訳なさが襲ってきた。