滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
ここでも、私は大人な風格を出せないのね…。
「お嬢ちゃんだって!奈緒子さん俺より年下に見られてんじゃねーのー!?」
あっはははは!と大笑いする蒼が無性に腹立たしくて、
私はムッとしたままスタスタと境内へ歩き始めた。
「怒るなって〜」
後ろから含み笑いしたままの蒼が追いかけてくるが無視。
「奈緒子さんってば、待ってよー」
…まだ無視。
そんな私の体を張った行動に、
蒼も頭をポリポリとかいて、少し反省の色を見せる。
「奈〜緒子さん」
蒼は足早に私の前に先回りして、私の足を強引に止める。
「…何?」
「許して?ごめんね」
ぶっきらぼうに言った私の顔を覗き込んで謝る蒼。
その瞬間、ちゅっと頬に軽くキスをしてきたのだ。
「なっなっなな!!」
口づけされた頬を手で触れたまま、
一気に顔を赤くしてパニックになる私。
「あ、ご機嫌になったな!よかった〜」
イヒヒと意地悪そうにはにかむ蒼が私より一枚上手だったのが、ちょっぴり許せないが、
その後は仲直りの印にとずっと手を繋いでくれて、
悔しいけど簡単に許してしまう私がいた。