滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

一番の混み具合が激しい境内には、
たくさんの参拝客がいてお賽銭を投げるのも一苦労だった。





「奈緒子さん、何お願いしたの?」

「それを言ったら願い叶わないじゃない」

「あ、そっか」




そんな話をしながら御神籤コーナーに立ち寄った私達。


百円を払い専用のみくじ箱を回して出てきた番号札を抜き取った。


そして札に書かれたその番号の受付棚から一枚みくじ籤を受け取る…。




「いっせいのせで裏替えそうぜ?」

「いいよ〜?」


「「いっせーのせっっ!!」」




互いに勢いよくめくったみくじ籤には、

同じ“大吉”の文字が大きく記されていた。



「願い、叶う。恋愛、必ず成就…?」

「仕事、己を信じろ。失物、時間はかかるが手元に帰ってくる?そんなの何かあったっけ?」





各々の神籤を読み上げながらも、何だがピンとこない診断に頭を傾げる私達。



とりあえず結果は良かったので、

そのまま枝にくくりつけることにした。






「ま、二人揃って大吉だなんて最強じゃね?」

「何が最強なのかわからないけどね」





再び手を取り合って互いに笑い合う。



それは何処からどう見ても恋人同士のようだった。

< 210 / 262 >

この作品をシェア

pagetop