滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
検査の結果は特に悪化してる箇所はないらしく、
大事を取るという意味での入院らしい。
「ホント困ったわ…。またこんなことがあるといけないから店の事、真面目に考えなくちゃいけないわよね」
ハァ〜と疲れた表情でため息をつく母親。
たしかに倒れる度に店を閉めたり開けたりでは、
やってくる客にも迷惑だし、素材や材料だって無駄になってしまう。
創作和菓子は一日しか持たないため、
残ったものは全て廃棄処分になるのだ。
「奈緒子のお友達も、何だがへんな事に巻き込んじゃってごめんなさいね」
「いえ、俺は大丈夫です」
申し訳なさそうに言った母親に、
蒼は毅然とした態度で返した。
「…」
「な、何?」
私と隣に立つ蒼を交互に見比べては、
何か言いたげな顔をして見つめる母親に、
私はどきまぎしながら言った。