滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「あの、ね?間違ってたら申し訳ないんだけど、彼は彼氏さん?」
「なっ、なっ、なに何言ってんの!?」
「ーーいえ、俺は奈緒子さんの同じ部で働く上司です」
ーー!
「あらやだ!奈緒子の上司の方なの!?もう、何で奈緒子言わないのよ!すみません、わさわざお手伝いまでさせてしまって」
「いえ、俺こそ勝手に奈緒子さんに確認せずお邪魔して申し訳ないです」
上司。
上司…。
上司……。
彼氏じゃないなら、
友達とか知り合いで適当に合わせればいいじゃない。
そこで上司っていう言葉はちょっと酷だよ。
暫く二人は立ち話したあと、
私は蒼と共に病院を後にした。
シーンとした自宅に帰ってきた私達。
ちょうど夕刻を知らせるチャイムが町に響き渡る。
「今日は帰るの?」
「まぁ、そのつもりだけど」
「晩御飯は?」
「考えてない」