滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

ーーあぁ…私最悪だ。

完全に苛々してる。




明らかに口調が違う事に、

バカみたいに呆れていた。




蒼は何も悪いことしてないし、
何も嘘はついていない。



ただ、私の上司だと紹介しただけなのに、私の心には大きな傷がついている。




しかしそれはあまりにも自己中心的過ぎて、

その考え方に自分自身苛々しているのだとわかった。





「奈緒子さん?」



立ったまま茫然としていた私に、

少し離れて立っていた蒼が不思議そうに声をかける。





「残り物ぐらいしかないけど、ご飯食べて行って?帰るのはそれからでもいいでしょ」




私は蒼に背を向けたまま振り返らずにその場で言うと、キッチンに向かおうとした。




その瞬間、腕をグッと掴まれ足止めを食らった。




「何怒ってんの?」

「怒ってないよ」

「っ、怒ってんじゃん。バレバレだよ」


フッと鼻で笑った蒼に、
離して!と掴まれた腕で思い切り手を振りほどいた。

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