滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
その日は夕食を食べた後、私達は別々の部屋で就寝した。
私は広い畳の部屋。
蒼はリビングのソファーの上。
同じ家にいるのに、壁一枚隔ててるだけで別世界にいるような感覚だ。
「…」
寝付けない。
部屋の時計は既に深夜を回っている。
ーーもう、寝ちゃったかな…?
私はこっそり襖を開けると、
リビングで寝てるはずの蒼がいない。
帰ってしまったのかと不安になった私は、上着を着て和室から出た。
「蒼…君?」
薄暗い室内を見渡していると、
縁側に続く廊下の窓が少し空いていることに気づいた。
そっと近寄ると、
そこには縁側に座りコートを着て空を見上げる蒼の姿があった。
「…眠れないの?」
「あ、起こしちゃった?寒い??」
ううん、と首を横に振り蒼にそっと近寄る。
「星がよく見えるんだなーって思ってさ」