滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

その日は夕食を食べた後、私達は別々の部屋で就寝した。



私は広い畳の部屋。


蒼はリビングのソファーの上。




同じ家にいるのに、壁一枚隔ててるだけで別世界にいるような感覚だ。





「…」


寝付けない。

部屋の時計は既に深夜を回っている。



ーーもう、寝ちゃったかな…?




私はこっそり襖を開けると、

リビングで寝てるはずの蒼がいない。



帰ってしまったのかと不安になった私は、上着を着て和室から出た。





「蒼…君?」



薄暗い室内を見渡していると、
縁側に続く廊下の窓が少し空いていることに気づいた。




そっと近寄ると、


そこには縁側に座りコートを着て空を見上げる蒼の姿があった。





「…眠れないの?」

「あ、起こしちゃった?寒い??」




ううん、と首を横に振り蒼にそっと近寄る。




「星がよく見えるんだなーって思ってさ」

< 222 / 262 >

この作品をシェア

pagetop