滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
実家の空は満点の星で、
空気が澄んでいるせいか小さな物から大きく輝くものまでたくさん見える。
それは手を伸ばせば掴み取れるんじゃないかと錯覚してしまいそうなほどに。
「東京でもアメリカでもこんなに綺麗な夜空見たことねーや」
口元を緩ませて空を見上げるその横顔につい胸がキュンと締め付けられる。
「アメリカも東京もたくさんの光があって見えないからね。ここは毎日こぼれ落ちてきそうなぐらい、星がたくさん浮かんでるよ」
蒼の横にちょこんと座って私も一緒に星を見た。
誰も邪魔されない時間がゆっくりの流れる。
また東京に帰ったら毎日忙しく仕事して、
満員電車に乗って、たくさんの人間に揉まれて、時間に追われる生活が待っている。
それを選んだのは自分なのに、
そこへ戻るんだと思うだけで夢から覚めてしまうようなちょっと寂しい気持ちになった。