滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

ーー次の日、朝早く起きたら既に蒼の姿は既になかった。



ソファーの上には畳まれた布団だけが残されていて、
その上には一枚の紙切れが置いてあった。




“ご飯、ご馳走!あと、俺は濃い味が好きだな”



とわざわざ一言残して。





「若いうちから塩分取りすぎると糖尿になるぞ」




蒼の言葉に苦笑いしたまま堪らず助言してしまった私。


昨日はそんなこと言わず
黙々と食べていたクセに。




誰もいない実家は何だが物寂しい。


街の雑踏も邪魔な雑音も何も無い、
静寂な空気が流れる。



「とりあえず私も動こうかな」



手にしていた紙をポケットの中に入れて、
私は縁側に行き勢いよくカーテンを開けた。



「うっ!」





シャッ!と開けた途端、眩しい光りが差し込んできて、
その眩しさに目をしかめた。



でも太陽の光はとても温かくて、

暗い部屋を一瞬で明るくする力を持っている。


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