滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

今日も新しい一日が始まる。



今日も病院に行ってみよう。

明日には東京に戻らないといけないから、会える時に親と会っておかないと。





今出来ることをしよう。


それが悔いを残さない生き方の第一歩だ。











一月六日。



仕事始めの今日。

新年の挨拶に社長が部に顔を出した。



社長に会うのはあのプレゼン以来。
普段はなかなかお目にかかれない雲の上の方なのだ。





「今日はみなさんにお知らせがあります」




皆持ち場の場所から立ったままで部長の席の前に立つ社長を見つめていた。



ーー知らせ…?
なんだろう。




今日も蒼は休んでいるようで姿が見えない。



これじゃ、まるで……。






「新しい部長の就任が決まった。彼はあの大手洋菓子屋メーカーからわざわざ来てくれたやり手の方だ」





ーー嘘だ!






その言葉を言った途端、室内は一瞬で騒ついた。

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