滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
その日の夜、
私は会社が終わってすぐ手当たり次第蒼がいそうな場所を探した。
しかし案の定その姿はない。
最後の手段として私は蒼の自宅へ向かうことにした。
どうかいてほしい、
何も言わずに抱きしめて欲しい…!
その願い一心でタクシーを拾って曖昧な記憶を思い出し、
マンションの場所を伝える。
何とか理解出来た運転手はそのまま車を走らせた。
「…」
なんとか蒼の自宅に着いたが、
最近のセキュリティーマンションなので、中へどう入ったらいいかすら分からない。
それによくよく考えれば、
蒼がどこの何号室に住んでるかすら覚えていないのだ。
この前来たときはそんなことすら見てなかったし、
まさかまたここに来るなんて思ってみなかったし…。
「あーっ、どうしよーっっ」
蒼探しはここまでか…。
そう思った時だった。