滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

「…」



そう甘えるように呟く私の思いとは裏腹に、

蒼は私の見えないところで真剣な顔をしている。




あえて私にその表情を見せなかったのは、自分の気持ちの揺らぎを悟られたくなかったのかもしれない。




しかしそんな事を知らない私は、

蒼に抱きついたまま至福の時間を肌で感じていた。





「…奈緒子さんがそんな事言うなんて。明日は雪じゃねーの?」

「あ、バカにしてるでしょ」

「だって今までそんな事言ってくれたことなかったじゃん」

「それはそうだけど…」




気持ちを煽るような言い方で話す蒼に、

ついつい頬を膨らませていじける私。





たしかに私らしくないと言えばそうかもしれないけど、

本当の気持ちに気付いた以上は何も隠す必要なんてない。



まぁ蒼からしたらいきなりどうしたのかと不思議がるのはしょうがないけど。





「でも奈緒子さんがそう言ってくれて嬉しい。ありがと」



優しく微笑んだ蒼が可愛くて愛おしくてたまらない。

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